2012年04月29日

桜 さくら SAKURA展

山種美術館に「桜 さくら SAKURA」展を観に行って来ました。各々の画に作者の言葉と其の画に相応しい歌が紹介されていて、心に響く展示方法となっていました。

まず目に入って来たのは奥村土牛作の「醍醐」です。心までもが桜に染まっていくかの様な素晴らしい作品です。此の絵画を観る前に「美の巨人たち」で此の絵画の説明を受けていましたので、感動がより大きかった様に思われます。

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此の絵は京都醍醐寺、三宝院の樹齢150年の枝垂れ桜を切り取った名画です。

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昭和38年の春、小林古径の7回忌の法要が奈良で行われました、その帰り京都、醍醐寺に立ち寄り、此の枝垂れ桜に出会います。神々しい程の輝きに満ちた桜の優美な佇まいに吾を忘れてみとれました。古径の導きとも言える出会いに運命を感じ、何時か描きたいと心に決めました。しかし時を経て描かれたのは意表をつく大胆な桜でした。優雅に枝を広げる満開の枝垂れ桜の全体を描くのではなく周囲を切り取り幹を中心にした構図にしたのは何故なのか。花弁一枚一枚を緻密に描いたのではないのにたっぷりの量感に見えるのは何故なのか。

83歳の土牛が此の絵で辿りついた一つの境地が色でした、どこまでも淡く透明な薄紅色、花弁を一枚一枚細かく描いているのではありません、色にもむらがあります、それにも拘わらず満開な桜に見えるのはなぜか。土牛が使ったのは綿燕脂という絵具でした。今ではてに入らない貴重な染料はラックカイガラムシの体液を抽出し綿に染み込ませたものです。

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東京芸術大学大学院 宮廻正明教授に綿燕脂の使い方を見せて貰いました。切り取った綿燕脂を水に浸し、染み込んだ染料を搾りとります。

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深みのある鮮やかな赤です。そこに少量の砂糖を加えて溶かします。次にゆせんにかけて水分を飛ばします、焼き付けと言う作業です。砂糖がはいった事で独特のてりと粘り気がでるのです。そして此の綿燕脂を胡粉に混ぜると一瞬にして見事な桜色になります、此れが醍醐の桜の色なのです。

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実際に描いて戴きましょう。うすく胡粉を引いた下地に同じく胡粉で花弁を描き、その上に桜色をうすくのせて行くのです。最初は色がついているのかどうかもわからない程、しかし何度もをれを繰り返すうちにやがて下地が仄かなピンク色に染まって来ます。

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花弁の表情がそれぞれに微妙に違っています。花の周囲に出来た絵具が染み込む時のむらが豊かな花の表情になるのです。百回以上も色を重ねその濃淡で表現された見事な迄の満開の桜。花弁を一枚一枚細かく描くのでは無く、淡くうすい色のかさなりによって桜の透明感と奥行きを表現しているのです。

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土牛は自ら重ね塗りについて「度々色を重ねて塗ってもそれが薄く見えると言う境地。それが現在の私の目指しているところである」と述べています。

しかしこれほと花の色を極めながらなぜ絵の中心が幹なのか。桜の中に何を見ようとしたのか。奥村土牛が昭和30年に発表した「城」

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単なる風景としての城では無く、建物の重なりや屋根など独特な造形美を大胆に色の面だけで切り取りました。同じく姫路城を描いた「門」、此の作品は門も開口部に注目し土塀に遮られた日本の城門特有の不思議な空間を切り取っています。この大胆な切り取り方こそが土牛流なのです。

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一瞬の内に捉えた感動をその場でスケッチします。その場所に拘った時、すでに土牛の目には描きたい部分が切り取られていたのです。「何時か醍醐の桜を」その思いは枝垂れ桜に出会ってから10年後に実現しました。寺に入り此処と決めたその場所に腰を据え早朝から日が暮れるまでスケッチを重ねました。花の盛りの一週間寺の人がお茶を薦めても耳に入らす一人黙々と描き続ける、その時の感動を書きとめたスケッチです。枝を一杯に広げた花姿をばっさりと切り取って大胆な構図に絞り込んでいます。

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本画ではさらに削ぎ落としています。此の絵で土牛は画面の中央に絶妙な垂らし込みで描かれた太い幹を配しました。150年間風雪に耐えて来た古木の生命力をどうしても表わしたかったから。生涯の師古径の導きとも言える運命的な桜との出会い、そのえにしを深く胸に刻みながら画家は自分の桜を描いたのです。それは正に苦労を画に見せないと言う古径の教えそのものでした。土牛は古径との縁をこう語って「下町生まれのまだわけの分からない悪戯っ子だった私が古径先生の美しい御人格に打たれてこんなにも清らかな世界があるものかと驚いた感情は忘れる事が出来ません」

日本画家奥村土牛 荒れ地を耕す牛のごとくひたすら美の奥底を見つめ続けました。渾身の力で描いた清らかな世界。薄く淡い色を追い求め、切り取った世界に桜の命を封じ込めました。奥村土牛画伯「醍醐」 どこまでもさらりと透明な桜色。

                 美の巨人たち   引用

画の外にまでも桜色が広がっているかの様な「醍醐」 とても美しい色合いの美しさに感動しました。



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春静 東山魁夷

静寂の中、凛としたグリーンの山を背景に咲く山桜。バックと対照的な桜の可憐さに魅了されました。


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吉野  石田武

桜の花一つ一つまで繊細に描かれた作品、その緻密さに目を奪われました。桜に染まった吉野 一度は訪れてみたいと思います。

今回の展覧会には川合玉堂画伯の作品も数多く展示されていました。密やかに咲く桜の花もとても風情があって素敵でした。

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春庭  小茂田青樹

桜の花びらが敷き詰められた小道。桜の舞に酔いしれそうな風景です。


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春朝  横山大観

強い線で描かれた桜の木。歳を経た桜の逞しさを感じます。


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月・桜・柳のうち「桜」  西郷狐月

糸桜と呼ぶに相応しい繊細な枝ぶりの枝垂れ桜。とても美しく、見とれてしまいました。

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山桜に雀  川崎小虎

桜の木に休む二羽の雀。二羽とも目をつむっています、とても其の様子が可愛らしく何時までも観ていました。


美術館のお花見も良いものです。

心に響く作品が多く、図録を買って来ました。山種美術館では図録の販売はとても珍しく、作者の言葉、和歌も紹介されており、図録を見ては再度感動に浸っています。

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素晴らしい作品に感動した後は何時もの通り、一階のカフェ椿でお茶を頂きました。何時も楽しみなのは画をモチーフにした和菓子です。今回、いただいたのは「醍醐」 とても綺麗なお菓子です。形を崩してしまうのがもったいないと思いつつ口に運びます。

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とても心満たされた思いを抱きつつ美術館を後にしました。





http://www.yamatane-museum.jp/exh/current.html
























crystaltakara at 18:25│Comments(0)TrackBack(0)

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