欧州鉄道の旅 特別編 イースタン&オリエンタル・エクスプレス ③山種美術館から自由が丘 Amici 散策

2012年01月29日

旅のチカラ   犬の幸せって何だろう・・・

子供と犬の躾はドイツ人に習え」という諺があります。今回の旅人は女優の浅田美代子さん。テレビにドラマ、最近ではバラエティー番組でも活躍しています。小さい頃から浅田さんの回りには何時も犬がいました。楽しいにつけ悲しいにつけ犬は人生のパートナーでした。10年前に母親を亡くした時2匹の犬に救われたと言います。

浅田さんはペットの保護活動にも積極的です。犬の里親探しのイベントにも参加しています。浅田さんが飼っている犬も殺処分寸前で浅田さんが保護しました。日本では行き場の無い犬の扱いに困り年間7万頭もの命を奪っています。こうした中、浅田さんは殺処分が行われていない国がある事を知りました。それがドイツです。

「殺処分ゼロと言う事を見て来たい、それをどうすれば現実化できるのか」

私も今回のテーマにとても興味を持ち此の番組を観ました。観れば観るほどドイツのシステムの素晴らしさ、飼い主としての責任の重要性を感じました。

浅田さんはドイツ ベルリンにあるティアハイムと言う動物の孤児院を訪れます。殺処分ゼロを実現する動物愛護施設です。行き場の無い犬を保護し、飼い主がみつかる迄責任を持ちます。浅田さんのベルリンの体験は人と犬の関係に新鮮なヒント満載の刺激的な旅でした。

ドイツは動物愛護先進国です。飼い主失格と判定されれば犬を取り上げられます。又平均で年間15000円の犬税も義務付けられています。愛情にともなう責任がこの国のルールです。厳しく躾られた犬が自由に歩き回っています。電車やバスなどの公共交通機関も利用出来ます。運賃は子供料金です。

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リードなしで公園を散歩する犬達

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ケージに入れなくても交通機関に乗せられる凄さ。どちらも躾の行き届いている証拠ですね。

市街地から車で1時間、ティアハイム ベルリンという飼い主を失った動物の収容施設です。飼い主として資格があると認定されれば犬は希望する一般家庭に譲られます。ティアハイムは規模の大小はありますがドイツ全土に500以上あります。施設は市民の寄付金で運営されます。110年の歴史を誇るティアハイム ベルリンは15000人の会員や遺言による寄付金が寄せられます。ティアハイムの犬は捨てられた犬です、たとえ飼い主がいても虐待など飼い主に問題があればここに送られてきます。ペット殺処分に反対の浅田さんはティアハイムの様な施設を日本に作りたいと考えています。飼い主は一年中募集しています。飼い主がみつからなくても犬の生存は最後迄保障されます。ドイツ全体のティアハイムで年間2万頭の犬が新しい飼い主に引き取られています。ドイツには犬を売るペットショップはありません。ティアハイムの様な施設かブリーダーから直接求めるのが一般的です。

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ティアハイム ベルリン

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此の様に広い所で飼育されているのですね。

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食事は毎日二食です。ティアハイム ベルリンだけでスタッフは130人。年間の運営費は寄付金で5億円を越えます。自分の犬を可愛がるだけでなく犬が人間社会に必要な大事なパートナーだと言う考え方に支えられています、それがティアハイム精神なのです。

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施設の中にある動物病院

ドイツでは犬全体の数のコントロールが犬と人間お互いの幸せと考えられています。又 施設の運営に欠かせないのがボランティアスタッフです。ペットショップが無い為ティアハイムを訪れる飼い主希望者は多い日は100人を越えます。希望者へは自宅に連れて行って相性を確かめる、いわばお試し期間が義務づけられています。

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ティアハイムにリハビリセンターと言う一角が有ります。リハビリは此処に来る迄に不幸な目にあった心に傷を持つ犬の心の治療をしています。

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浅田さんは何か手伝わせて欲しいとお願いしました。スタッフは相談の結果なんとリハビリセンターで飼われているシャーロットと言う闘犬で引きが強く歩かせるのが無理な状態の犬を預ける事にしました。どうして問題がある犬を浅田さんに預けるのか理解に苦しみ、スタッフに聞いてみました。スタッフは「自分の犬ばかりを可愛がっていてはいけない、どんな犬にも向き合う経験こそ浅田さんがティアハイム精神を学ぶ原点なのだと」答えました。

シャーロットはアメリカン・スタッフォードシャー・テリアと言う種類で1800年代改良された戦う犬、闘犬の血をひいています。強力な顎と闘争心でドイツでは危険犬種と指定されています。シャーロットは2才、2ケ月前、警察と獣医の判定で飼い主から取り上げられティアハイムにやって来ました、虐待されていたのです。落ち着きが無く、運動不足で他の犬への攻撃本能もむき出しでした。扱いの難しい犬と浅田さんの挌闘になります。シャーロットはの飼育には二つの狙いがあります。ひっつはシャーロットはが新しい飼い主を得るには人に慣れるのが条件です、一方浅田さんには自分の犬意外の得がたい時間が体験できるのです。

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相手が人間に虐待されているだけに展開がまったく読めません、浅田さんの難しいチャレンジが始まりました。犬とのお付き合いには献身的な世話がつきものです、愛犬家の浅田さんはなんなく汚れ仕事をこなしました。排泄物の処理や毎日の散歩、予防注射に水とえさ。動物の世話に国境はありません。施設に常駐するカウンセラーの事務所です。カウンセラーは犬の性格を見極め、飼い主の振舞い、考え方にアドバイスを与えています。警察と獣医によって飼い主から取り上げられたシャーロット、散歩もほとんどしていなかったとスタッフはみています。グウンドに放たれるとシャーロットが本性を表します。人間を見ると興奮し落ち着きを無くします。これまで人と接する機会がほとんど無かった様です。一瞬たりともじっとする事はありません。シャーロットは二か月かかって飼育員の言う事は聞く様にんりました。シャーロットは浅田さんの存在を無視したままです。浅田さんもようやくアクションをおこしましたがシャーロットは傍若無人の振舞いです。闘犬の血をひくシャーロットの顎は発達して、がっしりとした筋骨が特徴です、シャーロットは遊んでいる積りでも力が強く怪我をさせる事があります。お互いの警戒心でしょうか、大好きなおやつも渡せません。此の日は触れ合う事もできませんでした。

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シャーロットはまだ痩せていると言う判断でたっぷりと餌を貰います。ここに来るまでお腹一杯に餌を食べる経験が無かったのでしょうか、こうして触れ合いながら浅田さんはシャーロットの経験した悲しい過去を感じとっていました。

ベルリンの街角の風景には犬が何時でも溶け込んでいます。昼食で入ったレストラン。美味しそうな匂いにも犬達は大人しく待っています。犬は人間のパートナー、言葉だけでは無いドイツの現実です。

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浅田さんは動物愛護法の改正に強い主張を持って行動しています。殺処分をゼロにしたいと言う訴えです。現在三匹の犬と暮らしています。殺処分寸前に保護したアビー、ペットショップで買った老犬の桃太郎。桃太郎は20才です、目もほとんど見えず手厚い看護が必要です。犬と暮らせば暮らす程以前から抱いていた疑問が明らかになって来ます。

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犬にとっての幸せを探る手掛かりをベルリンのドッグスクールで確かめました。ドイツではほとんどの犬がドッグスクールに通学しています。浅田さんが見学したのは一才未満のクラス、飼い主が幼稚園児に付き添う父母のようです。校長先生が手本を見せます。子犬のうちから徹底した躾教育、さらに大切なのは飼い主の教育、犬以上に人間の自覚が試されます。校長先生の言葉です「私達の目的は躾る事で犬に最大限の自由を与える事です。」
此の言葉が私の胸に深く響きました。本当に其の通りです。躾をしておけばリード無しでの散歩も実現可能ですし、「まて」の躾が確りしていればレストランでの同席も可能です。

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スクールが終わった後、リード無しで犬達は森の中を走り回ります。犬同士の付き合い方を学ぶ、これも一つの教育なのですね。羨ましい限りです。

浅田さんはシャーロットとの付き合い方に新たなヒントを幾つも得る事が出来ました。躾も四日目になりました、浅田さんは今迄とは打って変わってシャーロットと向き合う姿勢がみえました。遊び道具を与えシャーロットと共有する世界を広げる作戦に出ました。シャーロットに変化はありませんが、浅田さんの関わろうとする気持ちが強くなっています。「躾がされて初めて犬に自由が許される」ドッグスクールの校長先生の言葉が蘇ってきます。飼育員の助言にあった様に自信を持って接しなくてはなりません。シャーロットから目線を外さなくなった浅田さん、シャーロットの動きにも変化が出て来ます。大きく動作を加え繰り返します。アイコンタクトと大きな動作を繰り返す事でようやく気持ちが通じあった様です。いつの間にか触れる様になっていました。出会ってから4日目、収穫の多い一日でした。

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ティアハイム ベルリンでは年間およそ2000頭の犬が収容され、ほぼ同じ数が新しい飼い主に貰われて行きます。一日平均で5~6頭の計算になります。何度も通い、自宅にも連れて行き相性を確かめてようやく決めます。最終的な手続きと契約書へのサインです。およそ200ユーロの手数料を支払います。上手くいかなかったらまたティアハイムに返して貰う、此のケアーも殺処分ゼロに大きく貢献しています。

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新しい飼い主に引き取られたワンちゃん。とても幸せそうに新しい家庭に貰われて行きました。

ペットショップで犬が買えないドイツはティアハイムと並ぶ供給の二本柱はブリーダーからの直接販売です。訪ねたのはベルリンでも名の知れたブリーダーです。アンドレアさんはダックスフンド専門です。犬種を絞り、深い専門知識があって初めて健康な犬が繁殖する事が出来ると言います。評判のブリーダー、アンドレアさん、子犬九匹も書いてが決まっています。ダックスフンドは穴熊の狩猟用に改良された犬、穴熊の巣に潜り込みようすい様に改良され、胴が長くなりました。アンドレアさんの部屋の壁には野生動物のはく製が飾られていました。実はアンドレアさんの趣味は夫婦揃ってのハンティングです。ハンティングのお伴が自分で繁殖させた自慢のダックスフンドという事でした。ドイツ人にとってハンティングもまた趣味の王道といわれる大切なスポーツなのです。殺処分ゼロの実践と生き物を狩る文化の共存、浅田さんは驚き、納得の出来ない物を感じた様です。

私も同じ様に感じました。生命を授ける仕事と、生き物を狩る趣味、私は自分なら共存させられないと思います。

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滞在六日目です、グラウンドにはシャーロットを一人で世話をする浅田さんの姿がありました。飼育員は此の日浅田さん一人にシャーロットを任せる事にしました。待ての合図をして離れる浅田さん、シャーロットは素直に指示に従っています。シャーロットと浅田さんの間に温かい空気が混じり始めました。闘犬シャーロットがなんとお腹をさらしました。柔らかいお腹を見せるのは完全な服従の合図です。

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犬の幸せを探るのは難しい事です。浅田さんの心に強く残った犬の姿がベルリンにありました。ホームレスと路上で暮らす犬でした。二頭の犬と暮らすサビーネさん。責任を持って育てるかわりに犬はサビーネさんを救おうとする気持ちが旺盛でした。犬の存在が人の生き方を改める、人はぎりぎりの生活から犬の養育費を捻出します。不思議な信頼感がサビーネさんと二頭の犬から漂っていました。

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いよいよ最後の日です。浅田さんはティアハイムを日本に作る夢を持って訪れました。突然始まったシャーロットとの関係を通して自分の犬と他人の犬という垣根を払う体験をつみました。シャーロットが無事に新しい飼い主に引き取られてゆく時が浅田さんの無償の汗が報われる時です。

浅田さんを通して人との付き合い方を学んだシャーロットはこの取材の一ヵ月半後リハビリセンターを出る事が出来ました、評価が上がったのです。そしてシャーロットは大都市ベルリンを離れ、地方のティアハイムに送られました。旺盛な運動量を誇るシャーロットは田舎で生きる方が幸せだという配慮からです。

シャーロットと過ごした七日間、湿っぽい別れはティアハイムには似合いません。日本からやって来た浅田さんにシャーロットが犬の魅力を存分に伝えてくれました。

良い飼い主に巡り合うと良いですね、シャーロット!!    私もその様に希望します。

此の番組を観てドイツでの犬を飼う事に関する完璧なシステムを本当に素晴らしいと思いました。リードなしで公園を自由に散歩させられたら、ケージに入れなくても電車に乗せられたら、普通のレストランに犬同伴で入れたらと思います。その為には飼い主が確りと犬の躾をしなくてはなりませんね。愛情と躾 その両方が整って初めて犬を飼う資格があるのだと思います。


年間70000頭の犬、もっと上回る数の猫達が殺処分されるのは人間の責任です。一日も早くその様な悲しい事の無い社会になる様にと心から祈ります。







                                        旅のチカラ  引用




















crystaltakara at 17:44│Comments(0)TrackBack(0)

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