2011年04月27日

猫のしっぽ カエルの手 ⑥  ふるさとの家族

三月下旬、福岡県の北西部、玄界灘に面した宗像市は本州より一足早く春本番を迎えた。大地は菜の花の黄色で鮮やかに染まり、海は青く輝いている。

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変わらない故郷の景色。ベニシアさん、新幹線でおよそ4時間、久し振りに夫、正さんの実家を訪れた、迎えてくれたのは正さんの母、梶山敏子さんと父の武治さん。

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19年前、正さんから紹介されたのは9歳年上のイギリス人女性、最初はちょっぴり驚いた敏子さんと武治さん、悠仁くんという可愛い孫が生まれて、今ではすっかり当たり前の家族になった。

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ベニシアさんと敏子さんは今ではハーブ仲間でもある、植物が大好きだった敏子さん、庭で育てているハーブはどれも元気に育っている。年を重ねて行く両親への親孝行、帰省したら必ず二人は庭仕事を手伝う。伸びすぎたユーカリの剪定をするのは正さんの役目。ベニシアさんと敏子さんは新しくハーブの苗を植える。ハーブの話を始めたら止まらなり二人。足を痛めている敏子さんに変わってベニシアさんはせっせと苗を植える。敏子さんが前から欲しかったというレモンの木を植える事にした。一緒に庭仕事をしていると会わなかった時間があっという間に埋まって行く。

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ベニシアさんの入れたお茶でいっぷく。高校を卒業する迄、此の家で育った正さん、長男として大切に育てられた。山岳写真家として活躍している正さん、実は父親の武治さんも若い頃から写真に熱中していた。膨大な量の家族写真が残されている。写真の面白さを教えてくれた父に正さんはそっと有難うの気持ちを伝えた。

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ベニシアさん、帰省したら是非行ってみたい所があった。県南部にある八女市、茶畑の広がるこの町は正さんのお母さんが育った場所。此の地に「女神あり」と日本書紀にある事から名づけられた八女。

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江戸時代、久留米藩の城下町として職人が集まると地元の自然と融合した伝統工芸が数多く生まれた。八女川の清流では古くから紙漉きが行われて来た。こうぞと言う長い繊維を持つ植物を原料に持つ八女手漉き和紙、確りとしたこしが強いのが特徴で書画や掛軸に使われている。九州でもっとも歴史が古いと言う此の和紙を版画家、棟方志功もこよなく愛した。

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「弘伝の柵」 棟方志功作

豊富に収穫される竹で作られるのは八女提灯、全国一の生産量を誇る。中でも薄紙を使った盆提灯は明かりを灯すと繊細で気品溢れる姿を見せる。豊かな自然と匠の技を守り続ける町、八女。此処で生み出された物は今も日本の暮らしに息づいている。

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二人が訪れたのは正さんの親戚、100年以上続く絣織の工房を営む山村健、羊候さん夫妻。此方では絣の染めから織迄全てを家族だけで行っている。昔ながらの機織り、絣を織るのは母のツナヨさん。所々にかすった様に模様が入る所から絣。およそ200年前から各地で独特の技術が発達し、明治以降、日常を楽しむ生地として愛用された。中でも久留米絣は井桁や十文字など伝統的でありながらどこかモダンな柄が全国に知られている。

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縦糸はだいたい860本、4代続いて来た山村さんの工房は今迄とは違う新しいデザインを追及している。
山村さんが挑戦しているのは微妙な色合いのグラデュエーションを取り入れたデザイン。数字が並ぶ図面はまるで設計図だ。

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凄い細かな数式で模様が成り立っているのですね、素晴らしい。

絣の特徴の一つ、それは藍染の糸。染めを担当するのは息子の山村研介さん、高校を卒業後仕事を始め八年になる「藍染の場合は色を出すためにはつけただけでは色ないので、色を出す為に30回程染めます。」山村さんの工房では代々藍を発酵させたつくもうを染料としている。この天然の藍の染料は糸を叩いて酸化させる事で色がでる。自然のものだから一度に濃くは染まらない。何度も何度も同じ作業を繰り返して独特の色を出して行く。

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最後はおひさまの力をかりてしっかり干す。乾燥したら予めくくっておいた糸を外す。すると染められない白い糸が顔を出す、此の白い部分が柄になるのだ。

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糸を織り上げる為の準備をするのは羊候さんの仕事。「これは縦糸をまいている作業なんです。ここが一番神経を使うところなんです。此の段階で押さえてデザイン画の様にして行くんです。ちょっとひっかかると切れてしまいます。」図面に合わせ860本ある縦糸を少しづつづらしてゆく事であの絣ならではの複雑な柄を作って行く。ため息の出る様な作業のはてに出来る作品は二つと同じ物が無いと言う。美しい藍と手織の技が鮮やかな柄を描きだす。山村家の久留米絣。そこに家族で伝統を守る思いが込められている。

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細かい作業に驚きました、もう此の段階で模様が出来上がっているのですね。

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ベニシアさんもずっと前から絣の愛用者。肌触りや通気性の良い絣をもんぺに仕立てたいと考えていたベニシアさん。此の機会に反物を譲って貰う事にした。もんぺ推進委員になったペニシアさんこの絣でとっておきの一枚を作る積もりだ。

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藍色の美しい久留米絣、とても素敵ですね。

Veneta`s Essay  絣

何年も前 私は田舎に住んだことがあります。
夏の風は蒸し暑く、私達が住んでいた家の横には竹藪があり、畑には蚊の大群が飛んでいました。
私は村の女性達が藍染めの服を着て畑仕事をしていることに気づきました。
ある暑い日、近所の人が私にゆったりした作業着「もんぺ」を持って来てくれました。この布は彼女の母親が織った絣と言うもので。藍染めは虫よけの効果があると教えてくれました。
その目を見張る幾何学模様の布を纏った時とても着心地がいいことに驚きました。手織の布はなんて気持ちがいいの。

正さんの実家に戻るとそろそろ夕飯の準備。買いだしの途中、立ち寄ったのは正さんが良く歩いたと言う玄界灘の浜。ベニシアさんも少女時代を過ごしたジャージー島の海を思い出した。故郷の海は二人を子供に戻してくれた。

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対馬海流が流れる玄界灘は新鮮な魚貝類が水揚げされる。日本屈指の漁場として知られている。此の時期、旬を迎えるのは甘味のある身が特徴の甲イカ。新鮮な魚を一杯買い込む正さん。今日は此の材料を使って腕をふるう積りだ。正さん、山岳写真家になる前はカレー屋の店を営み、自ら厨房に立っていた。オリジナルのスパイスで夕食シーフードカレーを作ると言う。鍋の中で煮込んでいるのは魚のあら。地元の素材を存分に使って両親に喜んでもらいたい。甲イカはげそをカレーにいれ、身は刺身に。おこぜも刺身にさばく。ホールトマトとココナッをたっぷり入れて、スパイシーだけれどマイルドなカレーに仕上げる。

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玄界灘の旬がつまった正さんの特製シーフードカレー。近くに住む正さんの姉も加わって賑やかな食事が始まった。正さんのカレーを食べるのは初めてだと言う敏子さん、武治さん。ベニシアさんは思う日本の大切な家族、この笑顔溢れる時間を何時までも。

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Venetia's Diary   ふるさと

太陽が山の上から顔を出し、今日 最初の日射しを海に注いでいます。
私は腰をおろしてお茶を呑みながら、世界中の人がそれぞれの家で目を覚まし、一日の準備をしている様子を思い浮かべました。喜び 悲しみ 苦難の時、人はふるさとに帰りたいと思うものです、親や子供や親戚など愛する人達のもとへ。
家族が一つになり愛と希望を与え合えば怖いものはありません。
嵐のとき賢い鳥は必ず巣に戻ります。
私達もふるさとに戻って、人生の嵐が通り過ぎるのを待ちましょう。
私達は地球という美しい場所にくらしています。皆のふるさとなのですから、この地球をいう星を出来る限り美しくしていきましょう。

桜の花が咲いた。故郷への思いを抱きしめて新しい季節を歩きだす。

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今回の番組を観て、武者小路実篤氏の言葉が頭の中に浮かびました。「仲よきことは美しき哉」
何時もその様に生きて行きたいものです。


                     猫のしっぽ カエルの手  引用

























crystaltakara at 12:31│Comments(0)TrackBack(0)

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