2011年02月25日

欧州鉄道の旅・特別編 (3)

列車はすでに国境を越えスイスに入っています。東の空が白々と明けて来ています。まだ町は眠りからさめていません。こくこくと移り変わる小窓の外の風景を見ていると高原の朝のひんやりとした空気がキャビンの中に満ちてゆきます。朝5時、スチュワートは火を起こす作業から今日一日が始まります。「これがボイラーです、お湯をわしています。大きい方は暖房としても使っています」冬の暖房は薪と一緒に石炭をくべます、石炭によってより強力になった熱気がハイプを伝わって各キャビンに流れ、暖める仕組みになっています。オリエント急行には電気を使った空調設備はありません。窓の外の新鮮な空気が自然のエアコンなのです。今でも19世紀に作られた伝統を其の儘守り続けているのです。

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キャビンの通路に焼き立てのクロワッサンの香りが広がって乗客達は眠りから覚めた様です。朝食の配膳は全てキャビンのスチュワートが担当します。焼き立てのクロワッサンを自分が担当するだけの分を取るとキャビン・カーに運びます。味わいを楽しんで貰う為、夜中に心をこめて焼いたパンです。

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あらかじめセットしておいたトレーにパンをのせ、手早く朝食の準備に取り掛かります。此の手際の良さはオリエント急行の130年の長い歴史の中で培われた合理的な朝食の配膳システムなのです。朝食は各キャビンで取る事になっています。お客様の希望する時間に合わせてキャビンに届けます。朝食メニューはコンチネンタルブレックファースト。フレッシュジュース、パンと紅茶もしくはコーヒー。実にシンプルな朝食です。特製のバターとジャムを塗って焼き立てのパンの味を楽しみます。

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移りゆくスイス高原の景色を愛でながらまさにゴージャスなオリエント急行ならではの至福の朝をむかえました。オリエント急行を力強く引っ張っていくのはスイス国鉄の機関車です。

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午前9時10分スイス、ブッフス駅のホームに滑り込んでいきます。オリエント急行はロンドンからベネッツチィア迄750キロ走りますが、6ヵ国の国境を越えて走る国際列車です。隣の国に付く度に機関車をその国の機関車に変えて走ります。ここでスイス国鉄からオーストリア国鉄の赤い列車にバトンタッチします。

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これまでの経過を打ち合わせて、いよいよ出発です。スイス、ブッフス駅を出たオリエント急行はオーストリア、チロル州の首都インスブルックを目指します。

1883年開業以来ヨーロッパ各国へ抜けてさまざまなコースが出来たオリエント急行ですが、スイスからオーストリアにかけて風光明美なアルプス山脈をこえて行く此のコースはそ景色もあいまって人気があります。遠くにオーストリアアルプスの山並みが見え始めます。当時はアルプスを循環するシンクロントンネルを通過していましたが、現在はトンネルは使わずあえて遠回りをしながら、アルプスの山越えをして行きます。20世紀初め、ほぼ100年も前、製造された車両がどうやってこの過酷なアルプスの山を越えて行く事が出来るのでしょうか。そこには鉄道技術者の涙ぐましい努力があったのです。昔の車両の原型のままに実は車輪の足回りを強化し安全確保しています。内装関係は当然のごとく時間経過とともに
傷つき、耐久性は衰えてきます。オリエント急行の特徴であるアンティークの美しさを保つ為に担当者の苦労があったのです。「この車両は1930年に製造されました、オークションで購入したこの車両もパネルが掛け落ちていました。しかし昔の寄せ木細工のデザインを正確に修復しました。新しい木材でマホガニーの味わいを復元しなければなりません。この木は70歳なのに古い方は130歳以上の歳月を経ているのです。オリエント急行独特の寄木細工のデザインを尊重し復元に努力しています。」

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11時半過ぎ列車はオーストリア、インスブルック中央駅に入ってきました。駅の背後には頂上にまだ雪が残っています、ノルトケッテ連峰が屏風の様に連なっています。

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オールスリアはヨーロッパのほぼ中央に位置し周囲をスイス、リヒテンシュタイン、ハンガリー、スロバキア、ドイツ、チエコ、イタリアに囲まれた人口830万人の小国です。インスブルックは中世の昔から交通の要所の町として栄えてきました、現代でもその役割は変わりません。ヨーロッパ各国へと繋がるハグ駅として多くの人達に利用されています。中央駅のプラットフォームからはここインスブルックで1964年と1976年の二度にわたって開催された冬季オリンピックのジャンプ代を見る事が出来ます。ウィンタースポーッの盛んなヨーロッパ、中でもスキージャンプは人気の競技種目です。ベルクィーゼルジャンプ会場で繰り広げられた白熱の戦いはインスグルックの名前をいちゃく世界に知らしめ、冬はもとより夏のリゾート観光地として世界中から観光客が訪れる様になったのです。

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雄大なアルプスの山々に囲まれたチロル州、その首都のインスブルックはヨーロッパアルプスで最も大きい古い町でした、現在の人口はおよそ13万人、町の中央をイン川が流れる山間の美しい町です。町の中心地から出発するノルトケッテン鉄道に乗り、途中ケーブルカーに乗り継いで標高2000メートル近くにある展望台に進みます。途中、マウンテンバイクでスキーコースを下る勇敢な遊びやハイキングコースを散策する人などが眺められます。フィンガーブルク展望台にはヒュッテがあり、雄大な景色を見下ろしながら飲むオーストリアビールの味はまた格別です。

インスブルックの市民の足は路面電車、バス、自転車です。赤いモダンなデザインの路面電車は中世の街並みにはえています。1490年にチロル候によって町の基礎がつくられ、その旧市街の一角に心休まる教会があります。ローマカトリックのチロル地方の総本山聖ヤコブ協会です。

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今やインスブルックの象徴となった黄金の小屋根があります。チロル候がパレードを見下ろす為に作られた特別桟敷席ですが、その屋根には
2657枚の金の瓦が使われています。今でも時間によっては屋根が光輝くのを見る事ができます。

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オーストリアの中でチロル地方にローマ文化の影響が多く見られます。古代ローマ帝国時代以来ヨーロッパの東西南北を結ぶ交通の要所として重要な都市であったインスブルック、様々な文化をはらんだこの町は中世と現在が混在すつとても幻想的な都市です。

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さてインスブルック駅のホームではしばしオリエント急行が休んでいます。オーストリア国鉄の主力電気機関車1116形タウラスがやって来ました。アルプス越えに備えて機関車をさらにもう一両増結し、いわゆる二重連でワゴンリーを力強くひいて行きます。運転室では機関車の出発作業によねんがありません。これから車窓に現れるアルプスの風景は乗客の皆さんにとって最も楽しみな事なのです、走行速度一つにも演出が必要です。ゆっくりとスタートします。

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各国毎に機関車を連結する事をしりました。6ヵ国を走り抜けて行くオリエント急行はまさに国際列車なのですね。一カ国一カ国に降りたってみたくなりますね。



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                        欧州鉄道の旅・特別編 引用




crystaltakara at 18:41│Comments(0)TrackBack(0)

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