2011年02月23日

欧州鉄道の旅・特別編 (2)

ワゴンリーの車体の横に描かれた金色の向獅子のレリーフがオリエント急行の歴史をものがたり、燦然と輝いています。

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いよいよ期待に胸ふくらませる乗客を乗せてパリへ向けてヨーロッパ大陸を滑り出し始めました。駅を出てまもなく全車両のキャビンにトレイン・マネージャーの車内案内のアナウンスがあります。ワゴンリーの車体は1920年~1930年代にかけて製造され、全17車両、全長401メートルでその姿は走る貴婦人とも呼ばれています。キャビンの内装もマホガニーの壁にゴブラン織の座席、当時のエレガントな佇まいをそのまま残しています。乗客のお世話をする専任のスチュワートが車両ごろに付いています。一泊二日の鉄道の旅、食事の予約方法、トイレの場所、ベッドの使い方など始めて乗車した乗客にとって必要な情報をスチュワートは丁寧に一つづつ説明して行きます。

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読書用ライト

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扇風機

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ミラーライト

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就寝中のブルーライト

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室内灯

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キャビンの一角に合理的にデザインされた洗面台があり、常時、水とお湯がでます。

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キャビンにはポストカードが用意されています、オリエント急行オリジナルの切手を貼って車内のポストから投函する事が出来ます。アメニィティーも充実しており、心遣いがうかがわれます。

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シングルキャビンは14室、ダブルキャビンは88室、ダブルキャビンの二つの部屋を繋げスィートとして使えるコネクティングキャビンもあります。ワゴンリーは3両がレストランカー、内装が3両供異なっています。

エトワール ドゥノール

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1926年に製造された車両です。壁面には寄木細工が施されています。

オリエンタル

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その名前が示すように中国風の漆絵が装飾に使われています。

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このレストランカーにあるワインセラーには赤ワインはフランスからイタリアまで24種類、白ワインもフランスからイタリアまで、更にシャンパンが用意されています。

コートダジュール

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当時の人気アーティスト、ルネ・ラリックのガラスパネルが爽やかさを演出しています。

ディナーの予約もリクエストをすればお気に入りのレストランカーを選ぶ事が出来ます。

ルネ・ラリックの作品の好きな私はディナーは是非ともコートダジュールでいただきたいなと思います。

レストランカーの隣に連結されているのがバー・カーです。内装をアール・デコで仕上げられたバー・カーは一日中オープンしています。ピアノの生演奏を聞きながらアルコールはもちろんコーヒーやソフトドリンクを楽しむ事が出来ます。

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優雅な雰囲気のオリエント急行にはドレスコールがあります、ディナータイムのレストラン、バー・カーでは男性も女性も正装しなくてはなりません。乗客は期待に胸を膨らませて着飾ってレストラン・カーにやってきます。女性二人旅のアンナさんとマリーさんの選んだのはコートダジュールです。
ソムリエのジョゼルネさんが選んでくれたお薦めのワインを手慣れた手つきで開けてくれます。ワインにまつわるソムリエの話は食事の美味しさをさらに増してくれます。

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キッチン・カーでは限られたスペースでシェフ達が料理の仕上げに掛かっています。ロブスターの尾の向けたか一つにも細心の心配りをしています。料理長の厳しいチエックを受けて初めてレストラン・カーへと運ばれて行きます。

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ブリタニー産ロブスターきゅうりとアボガドのタルタル・アーモンド風味のアオボガドオイル添え
オードブルのシーフードで目に鮮やかな赤いロブスターは食欲をさそいます。
料理長クリスチャン・ボディゲルさんが一つ一つのテーブルを訪ねます。

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続いてメインディシュの肉料理、好みによってひきたてのコショーをかけてもらいます。
ビーフフィレのハーブ焼き ジンジャーブレッド風味のマスタードソース
二人の嬉しそうな笑顔を見て料理長は満足している様です。

二人がメインディシュの肉料理を食べ終える頃、オリエント急行はロンドンを出発してからおよそ9時間、パリ西駅に入ってきました。パリ西駅では水の補給や荷物の積み下ろしの為およそ40分間停車します。

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1883年オリエント急行の始発駅として使用されたパリ東駅、世界の観光都市パリには一年間に実に4,500万人の観光客がやって来ます。パリはどこか人を引き寄せる甘い蜜の様な味がする町かもしれません。

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いつの時代にも文化、ファッション、デザインの最新情報の発祥地であり、世界の流行を常にリードする都市です。19世紀後半から20世紀初頭にかけて当時のフランスはベルエポックと呼ばれる良き時代でした。その文化の中心であったのはアール・ヌーボー、新しい芸術運動でした。
1900年に開催されたパリ万国博覧会で大きな建造物が四つ建てられました、その一つがエッフェル塔、当初その奇抜な外観から評判が良くありませんでしたが、塔の細部を見るとアール・ヌーボーのデザインが施され鉄の塔らしからぬ美しい印象をもたらしているのがわかります。

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そして二つ目と三つ目は同じく万国博の展示場として建設されたグラン・パレとその向かいに建てられたプティ・パレです。古典的な石造り、大胆なアール・ヌーボーの装飾が施されています。現在、美術展などの展示会場として使われています。

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四つ目はセーヌ川に架かるアレキサンドル3世橋。アール・ヌーボーの影響を見る事が出来ます。

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パリの町は町全体が観光名所と言っていいでしょう。町を歩けば重要な建造物を見る事が出来ます。

パリ、オペラ座

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エトワール凱旋門

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そこから遠く無い所にひっそりと存在する地位さな建造物にアール・ヌーボーを発見する事が出来ます。アール・ヌーボーを代表する建築家エクトール・ギマールがデザインしたメトロ(地下鉄)の出入り口。此の斬新なデザインは今でもパリの人々に愛されています。

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パリの高級住宅が立ち並ぶパリの6区モーツアルト通り、このあたりにはベクトール・ギマールがデザインした邸宅が残っています。花や植物をモチーフに自由に曲線を組み合わせていあります。それまで使われなかった無機質の鉄やガラスと言った新素材を利用した独自の装飾性はパリの文化生活の隅々迄影響を与えたのです。

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「ラリックをめぐるフランスの旅」が出版されていますが、フランスの所々でラリックの作品を観る事ができるのですね。フランスにいらっしゃる方にはお薦めのスポットです。

オリエント急行の旅に戻りましょう。

パリは今午後9時57分、定刻にパリ東駅を出発します。目的地はオーストリア・インスブルック駅です。これから夜を徹してはしります。夜半にフランスからスイスに入り、明け方にはチューリヒ湖を横にリヒテンシュタィンを通過し、オーストリア・インスブルックに向かいます。

食事を終えた乗客がキャビンに引き上げ、レストラン・カーは落ち着いた時間が訪れます。しばし遠ざかるパリの灯を眺めながらメインディッシュを堪能した二人は話が弾んでいる様です。

メインディシュの後の楽しみはチーズです。一つ一つチーズの説明を受けながら選ぶ楽しみがあります。香り高く、奥深いチーズの世界をここオリエント急行のレストラン・カーで楽しむ事が出来ます。

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そしてフルコースの最後はデザートです。

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グラン・マニエの冷たいスフレ

二人のディナータイムもそろそろエンディングの時間です。時計は午後10時半を回っています。

この時刻、キャビンではベッドメーキングが始まっています。此の部屋はダブルキャビンになっています、つまり二段ベッドです。何時も快適なベッドを提供しています。

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始めて列車の中で休まれるお客様が安心して眠れる様にスチュワートは枕一つにしても心をこめて準備をしてくれています。何時もの家のベッドとは違う列車の中で寝るということもオリエント急行ならではの楽しみの一つと言って良いでしょう。

パリの灯が遠ざかる頃、バー・カーはヨーロッパの社交界の雰囲気を漂わせています。着飾った紳士、淑女のかわす上品な会話。カクテルの甘い香り、ピアノの音色、ここが列車の中である事を忘れさせてくれます。ここオリエント急行のバー・カーにだけ特別なカクテルを作って貰えます。作家アガサ・クリスティーは旅行が好きでオリエント急行にもたびたび乗車し、1933年不朽の名作「オリエント急行殺人事件」を書き、オリエント急行とアガサ・クリスティーは切っても切れない関係となりました。カクテルが出来上がりました。これがアガサ・クリスティー・ベルーニです。この特製のカクテルは昔のレシピのままです、イタリアのスパークリングワインと桃のピューレと・・・後は秘密です。

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此のバー・カーには閉店時間とうものはありません。

こうしてオリエント急行の一日目は無事終わろうとしています。

オリエント急行ワゴンリーに付いてお話させて下さい。

此処はパリ郊外のミュールズ鉄道博物館です。ここにはかってヨーロッパ大陸を駆け巡った鉄道車両の実物が保存されています。この車両もその一つです、1920年頃、実際にオリエント急行としてパリからイスタンブールまで走っていたオリエント急行のワゴンリーです。ワゴンリーとはフランス語で寝台車と言う意味で、コンパートメントの客車は昼間はリビングルーム、夜はソファーをベッドに変身させてベッドルームとなります。

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ワゴンリーを創設したジョルジュ・ナゲルマケールス氏は食堂車にキッチンを併設し、暖かいフランス料理とワインをサービスし、当時、誰も考えられなかった高価なオリエント急行を走らせたのです。これらは当時、実際に使われていた食器です。この客車の片隅でフランス料理のフルコースを作っていたのです。

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パリを出発しスイス、アルプス、イタリアのベネッツィア、さらにブルガリア、ソフィアを通過してトルコのイスタンブール迄の鉄道の旅は当時のヨーロッパの王侯貴族、文豪、文人にとってもっともファッショナブルな旅だったのです。


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                       欧州鉄道の旅、特別編 引用

















crystaltakara at 17:19│Comments(0)TrackBack(0)

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